宣告された日から役立つ知識をわかりやすく解説!
前立腺がんを宣告されたら、「転移は大丈夫だろうか…」「今後どのような症状が出てくるのだろうか…」「転移を防ぐために何かできる対策はないのか…?」「どんな治療をしていくのだろうか…?」など、さまざまなことが気になって不安でいっぱいになる方も多いことでしょう。
このサイトでは、前立腺がんの転移にまつわる知識や、転移予防のために知っておきたい対策、また検査方法や治療方法など、役に立つさまざまな情報を、詳しく解説していきます。
患者さんご本人やその家族、また、治療は終わったけれど今後の転移が心配な方など、多くの皆さんの参考になれば幸いです。
<前立腺がんの転移の流れ>
参照元:Duke Health
https://corporate.dukehealth.org/news-listing/
where-prostate-cancer-spreads-body-affects-survival-time
気付かないうちに進行しているのが前立腺がん
前立腺がんは、初期のステージでは自覚症状がほとんどないと言われています。そのため、自覚できるような症状が現れてくるころには、末期がんの状態にまで進行している…という可能性が。
前立腺がんの末期になると、骨への転移(骨転移)が高頻度で生じます。 その症状としては、腰に感じる強い痛みや下半身麻痺、骨折などが挙げられます。
<前立腺がん転移部位別生存期間(中央値)>
参照元:Duke Health
https://corporate.dukehealth.org/news-listing/
where-prostate-cancer-spreads-body-affects-survival-time
転移すると完治が難しい!?
前立腺がんは骨のほかにも肺やリンパ節、肝臓、脳などへ転移する可能性があり、一度転移してしまうと根治的治療が難しいケースもあります。
デューク大学医療センターによると、リンパ節転移のみの患者は全生存期間が最も長くて32カ月、肝転移患者は最も短く14カ月ほどになります。 肺転移または骨転移患者ではその中間になる20カ月前後の研究結果が発表されています。
生存率はあくまで数字にすぎません。実際に生きられる期間はそれぞれの患者で異なります。 統計上の数値は気にしすぎず治療について前向きに取り組んでいくことが重要です。
転移しないための対策
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ステージごとの進行具合や症状、生存率をチェック
前立腺がんは現在どのステージにいるかで現れる症状も異なってきます。
ステージはがん細胞がどのくらい進行しているか?がんの悪性度はどの程度なのか?転移は起こっているか…? といった情報から決められます。
以下に、「ステージ1」「ステージ2」「ステージ3」「ステージ4」の、4つのステージごとに特徴をまとめて表にしてみました。
また、転移の有無で「初期~中期」「後期」という2つの時期に分けて、現れてくる主な症状も紹介します。
ステージ1
100%
検査でも見つけられないほどがん細胞が小さく、前立腺肥大症などの検査でたまたま見つかることがある程度。
なし
ステージ2
100%
がんが前立腺内に留まっている状態(直腸から指を挿入して検査する「直腸診」でがん細胞が確認でき、また画像診断によっても確認できる)。
なし
ステージ3
100%
前立腺だけに留まらず、周りの精嚢や膀胱にまでがん細胞が広がっている状態。ただ、転移はまだ起こっていない。
なし
ステージ4
64%
前立腺のみならず、膀胱や直腸、リンパ節などにもがん細胞が広がっていて、他の組織や臓器への転移が起きている状態。
あり
初期段階では自覚症状がないことがほとんど
前立腺がんは比較的進行速度の緩やかながんであり、初期のステージでは、自覚できる症状が現れることはほとんどないと言われています。
しかし、気付かずに放置してしまうと腫瘍はだんだん大きくなっていき、尿道が圧迫されることによって尿が出にくくなったり、残尿感が残ったり…といったような症状が現れはじめます。
進行がんの可能性が高い症状とは
ステージ4まで進行した前立腺がんにおいて現れる症状としては、主に以下のようなものが挙げられます。(以下に挙げる症状は前立腺がん以外の原因でも現れるもののため、「以下の症状を発症=進行した前立腺がん」とは限りません。)
転移の種類&場所をチェック
私たち人間の身体を形づくっている細胞は、基本的にその場所に留まり続けるという性質を備えていますが、がん細胞はその性質を無視してリンパや血液の流れに乗っかり身体中のさまざまな部位へ移動を行ないます。それが、がんの転移です。
では、転移にはどのような種類があるのでしょうか…?
以下に、がん転移の4つの種類と、前立腺がんの転移が起こりやすいと言われる場所をまとめてみました。
転移の仕方にはタイプがある
がんの転移は、転移する経路(転移の方法)によって、以下に分けられます。
これは、前立腺がんだけでなく、すべてのがんに共通する分類の仕方です。
がんの転移は身体のさまざまな場所に起こるもの
転移の仕方もさまざまですが、転移する場所(転移先)もさまざま。肺や肝臓、骨、脳、リンパ節など、がん転移は身体のあらゆる部位に起こり得る可能性があります。
前立腺がんの転移においては、なかでも「骨」「リンパ節」「肺」への転移が起こりやすいと言われており、それぞれ「骨転移」「リンパ節転移」「肺転移」と呼ばれます。骨転移であれば身体の中心部に近い骨(脊椎(背骨)、骨盤、肋骨、上腕骨、大腿骨など)から全身に広がっていきます。以下に、各転移の特徴をまとめてみました。
前立腺がんの転移の中で最も多いのが骨転移
原発巣のがん細胞が、血液の流れに乗っかって骨に移動し、転移巣をつくるケースです。骨転移はよくみられる転移であり、前立腺がんにおいても骨転移が起こるケースは非常に多いと言われます。
骨転移は、骨の破壊のされ方によって、「溶骨型」「造骨型」「混合型」の3つの種類に分けられます。
骨転移が起こると、痛みや骨折、神経障害、高カルシウム血症といった症状が現れるのが一般的です。
がんが全身に転移する可能性も…
リンパ節転移とは原発巣のがん細胞が、リンパ節(身体の中の免疫器官のひとつ)に転移した病態を指します。
前立腺がんのリンパ節転移は、骨盤の中で前立腺の周りにあるリンパ節に多く見られます。 主な症状としては、下半身のむくみ、しびれ、排尿トラブルといったものが挙げられます。 リンパ節転移が進行すると、身体中を巡っているリンパ管を通して、全身の臓器に遠隔転移してしまう可能性もあります。
がん細胞が血液に混じって肺に転移
原発巣のがん細胞が、肺に転移した病態を指します。
肺にはたくさんの毛細血管が張り巡らされているため、リンパや血液の流れに乗ったがん細胞が流れ込みやすいという特徴があります。つまり、他の臓器に比べて肺は転移が起こりやすい部位といえます。
肺転移が起こった場合に現れる主な症状としては、血痰・肺炎・気管支炎・しわがれ声・胸の痛み・呼吸困難・首や顔の腫れなどが挙げられます。
前立腺がんと言われたら早めの転移対策を
病院で前立腺がんと診断されたら、まず「目に見えない小さな転移は起こっているもの」と想定しましょう。そのうえで、できるかぎり転移の可能性を減らせるよう、早めに対策をスタートすることをおすすめします。普段の生活の中で、自分で行なえる対策もあります。
重要となるのは、「免疫を高めること」「食事を改善すること」「生活習慣を改善すること」の3つ。また、「セカンドオピニオンを受ける」ことも大切です。当サイトを監修している医療法人健身会の周東寛理事長から、転移しないためのポイントについてコメントを紹介しています。詳しく見ていきましょう。
医師監修
医療法人健身会
周東寛 理事長
西洋医学に東洋医学を取り入れた新たな視点から、食事指導や運動指導を実施されています。 予防医学にも尽力しており、ハイレベルの医療設備による病気の早期発見・早期対応の“発症予防医学の重要性”を提唱している方です。
免疫力を高める成分を取り入れる!
ウィルスや細菌など、病気を引き起こすさまざまな原因から身体を守る「免疫」。前立腺がんだけでなく、あらゆるがんの再発・転移予防に関係します。免疫力が低い場合、抗がん剤や放射線治療の効果も十分に得られません。
ここでは、免疫力を高める効果で注目されている成分について、詳しく紹介しています。
効果的な食材と好バランスな食事で対策!
日々の食事内容に気を配り、食生活を改善することによっても、前立腺がんの再発・転移は予防できます。ポイントとなるのは、「肉類や乳製品の過剰摂取を控えること」。そして、「大豆と緑茶を上手く取り入れること」。また、「野菜や果物を含めた栄養バランスの良い食事を摂ること」も大切です。
上のポイントがなぜ重要なのか、転移予防にどう働きかけるのかを知っておくと、効果的な食事対策が行なえます。
がんリスクを高める要因を排除して転移予防!
がんのリスクを高める要因は近年明らかにされつつあり、その要因を生活の中から取り除くことでがんを患いにくい身体に近付けることができます。また、一度患ってしまっても、その要因に気を付ければ転移・再発を防ぐこともできるでしょう。重要となるのは、以下の4つのポイントです。
納得のいく治療を進めるために知っておくべきシステム
セカンドオピニオンというのは、最初に診察・診断をしてもらった医師とは別の医師から診察を受け、意見を求めるシステム。より納得のいく治療を選択するために大変有用なシステムとして知られ、近年よく利用されるようになりました。
担当医の診断や治療方針にあまり納得がいかない…、本当に他の治療法がないか確かめたい…といった患者の不安・疑問に応えてくれるシステムです。
乳酸菌やビタミン、RBS米ぬか多糖体で免疫力アップ!
ウィルスや細菌など、病気を引き起こすさまざまな原因から身体を守る「免疫力」。前立腺がんだけでなく、あらゆるがんの再発・転移予防に関係します。免疫力が健全でない場合、抗がん剤や放射線治療の効果も十分に得られません。
免疫力を高めてくれる成分は乳酸菌やビタミン類などたくさんありますが、米ぬかに含まれる水溶性食物繊維を処理した「RBS米ぬか多糖体」も注目されています。
効果的な食材と好バランスな食事で対策!
日々の食事内容に気を配り、食生活を改善することによっても、前立腺がんの再発・転移は予防できます。ポイントとなるのは、「肉類や乳製品の過剰摂取を控えること」。そして、「大豆と緑茶を上手く取り入れること」。また、「野菜や果物を含めた栄養バランスの良い食事を摂ること」も大切です。
上のポイントがなぜ重要なのか、転移予防にどう働きかけるのかを知っておくと、効果的な食事対策が行なえます。
がんリスクを高める要因を排除して転移予防!
がんのリスクを高める要因は近年明らかにされつつあり、その要因を生活の中から取り除くことでがんを患いにくい身体に近付けることができます。また、一度患ってしまっても、その要因に気を付ければ転移・再発を防ぐこともできるでしょう。重要となるのは、以下の4つのポイントです。
納得のいく治療を進めるために知っておくべきシステム
セカンドオピニオンというのは、最初に診察・診断をしてもらった医師とは別の医師から診察を受け、意見を求めるシステム。より納得のいく治療を選択するために大変有用なシステムとして知られ、近年よく利用されるようになりました。
担当医の診断や治療方針にあまり納得がいかない…、本当に他の治療法がないか確かめたい…といった患者の不安・疑問に応えてくれるシステムです。
前立腺がんの転移診断に用いられる4つの検査
がんの広がりや転移を確かめるためには、通常、画像検査が行なわれます。
前立腺がんの転移を調べる画像検査として主流なのは、リンパ節や肺への転移を確認できる「CT検査」、がん細胞のある場所や浸潤の有無、リンパ節への転移が確認できる「MRI検査」、骨転移を確認できる「骨シンチグラフィー検査」など。また、「PSA」の値を測りながら経過を見る「PSA監視」という方法もあり、これら4つを必要に応じて行なうのが一般的です。
PSA値が高くなるにつれ前立腺がんの確率も高くなる
「PSA」は、前立腺がんの監視療法時にチェックする値。前立腺がんが発症している場合はこのPSA 値が上昇するため、前立腺がんが転移しているかどうかをチェックするための有効な指標となります。 PSA値の基準値や、PSA検査の概要、PSA値が上がってしまう要因などについて、詳しく見てみましょう。
PSA値は治療で下げることができますが、どの治療を受けるかによって、数値の変化の仕方には違いが出てきます。
「前立腺摘出術」「放射線治療」のそれぞれの治療後、PSA値がどのように変化するのか詳しく確認してみましょう。
前立腺がんの転移に対応する治療
前立腺がんの転移が確認された場合、以下に挙げる治療を必要に応じて行なうことになります。
治療内容によって症状が違う
前立腺がんの転移治療に伴う副作用は、以下のように治療の方法や場所などによってさまざまです。
また、前立腺がんに伴う合併症としては、性機能障害や尿失禁が挙げられます。
副作用と合併症それぞれの具体的な症状や対策について確認してみましょう。
前立腺がんにおける「転移」と「再発(再燃)」
同じようなイメージを持っている方が多いと思いますが、「転移」と「再発」は厳密にいうとその定義が異なります。さらに前立腺がんの場合、「再発」と区別して「再燃」というものもあり、分けて考えられるのが一般的です。
また、前立腺がんの再発には、具体的なケースを指して使われる「PSA再発」「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」というものがあります。
前立腺がんで再発(再燃)した場合の治療とは?
前立腺がんが再発(再燃)してしまった場合、初めに行なわれた治療によって治療方法は違ってきます。
治療の種類に応じて、「救済放射線療法」「ホルモン療法」「抗アンドロゲン剤の追加・変更・休止」などの対応が選択されることになるでしょう。
また、前立腺がんが再燃した場合に行なわれる化学療法にはいくつか種類があります。詳しく確認してみましょう。
TNM分類とは、「がんが前立腺内にとどまっているか否か」「リンパ節や離れた臓器への転移があるかどうか」など、がんの状態を評価する指標のことです。
前立腺がんの治療法は、がんの進行具合や身体の状態などを見ながら検討されます。前立腺がんの進行度のことを「病期」と言い、病期は「TNM分類」に基づいて判断するのが一般的です。
T、N、Mは画像診断や身体所見などの検査によって、細かく分類されます。分かりやすく表にまとめたので、こちらを参考にしてください。
T1 限局がん |
直腸診や画像診断では明らかにならず、前立腺肥大症や他の病気の治療・手術時に偶然見つかったがん | |
---|---|---|
T1a | 手術(前立腺肥大症など)で一部組織を切り取った時に見つかったがん(切り取った組織の5%以下) | |
T1b | 手術(前立腺肥大症など)で一部組織を切り取った時に見つかったがん(切り取った組織の5%超) | |
T1c | PSA上昇がみられるため、針生検(組織検)を行なったときに発見されたがん | |
T2 限局がん |
前立腺内とどまっているがん | |
T2a | 前立腺の左右どちらかにあり、1/2にとどまっているがん | |
T2b | 前立腺の左右どちらかにあり、1/2を超えて広がっているがん | |
T2c | 前立腺の左右両方に及ぶがん | |
T3 局所浸潤がん |
被膜(前立腺を覆う膜)を超えて広がったがん | |
T3a | 被膜の外側または膀胱の一部に広がっているがん | |
T3b | 精嚢にまで及ぶがん | |
T4 周囲臓器浸潤がん |
直腸や膀胱、骨盤壁など前立腺に隣接する組織に広がったがん | |
N0 | 所属リンパ節に転移していない場合 | |
N1 | 所属リンパ節に転移している場合 | |
M0 | 遠隔転移がない場合 | |
M1 | 遠隔転移がある場合 |
治療方針を決定するうえで特に重要なのがT1~T4の分類です。T分類によって、前立腺がんの状態が「限局がん」「局所浸潤がん」「周囲臓器浸潤がん」に区別されます。
がんが前立腺内にとどまっている状態のこと。前立腺がんが浸潤している場合、前立腺尖部といった前立腺被膜内であれば局所浸潤がん(T3)ではなく限局がん(T2)に分類されます。
前立腺を覆う被膜を超えて、がんが広がっている状態のこと。膀胱の一部や精嚢に浸潤している場合も局所浸潤がん(T3)に分類されます。
直腸や膀胱、骨盤壁など前立腺に隣接する組織(精嚢を除く)にがんが及んでしまった状態のことを指します。
■参照元
がんの進行度だけでなく、がん細胞の悪性度も前立腺がんの治療方針を検討する際の重要な情報です。前立腺がんの悪性度を評価する指標のことを「グリーソンスコア(グリーソン分類)」と言います。
グリーソンスコアは1966年にグリーソン医師によって考案されました。2013年にはグリーソン医師考案の分類法をもとにした新分類法が考案され、2014年に承認。がん細胞の悪性度をより的確に評価できるようになっています。
一言にがん細胞といっても、性質がまったく同じというわけではありません。前立腺がんの細胞は「高分化腺がん」「中分化腺がん」「低分化腺がん」、いずれかの性質を持っています。
がん細胞は持っている性質によって5段階の悪性度を分類されます。グレードが高くなるほど悪性度も高くなり、グレード5が最も悪性の高いがん細胞です。
グレーソンスコアを計算するときは、まず前立腺がんの細胞組織を採取します。そのうち、最も面積が大きいがん細胞のグレードと2番目に大きいがん細胞のグレードを確認。2つのグレードを足したものがグリーソンスコアとなります。
たとえば、最も面積が大きいがん細胞がグレード4、次いで面積が大きいがん細胞がグレード3だった場合、グリーソンスコアは7(グレード4+グレード3)です。
グリーソンスコアは2(グレード1+グレード1)~10(グレード5+グレード)の9段階に分類されます。
グリーソンスコアが高ければ高いほど、がんの悪性度も高くなります。
悪性度が高い場合はがんの進行が早く、再発や転移のリスクも高いと言われています。
同じグリーソンスコア7でも「最も面積が多いがん細胞のグレードが4、次いで面積が大きいがん細胞のグレードが3である場合」と、反対に「最も面積が多いがん細胞のグレードが3、次いで面積が大きいがん細胞のグレードが4である場合」では予後が異なります。
そのため、以前のグレーソンスコアでは正確な悪性度を評価することができませんでした。
この問題を解決するために2014年に承認された新分類法では、以下の基準を設定。グレードグループが高くなるほど、悪性度も高いと評価されます。
前立腺がんの治療法選択は、病状の評価をもとに行ないます。病状の評価のことをリスク分類と言い、病期(TNM分類)と悪性度(グリーソンスコア)、そしてPSA値の3つの情報をもとに判断。リスク分類の結果に基づいて、手術療法や放射線療法、薬物療法などから適した治療法を決定します。また、リスク分類は転移率・再発率を予測するうえでも有用な評価法です。
リスク分類は基本的に低リスク・中リスク・高リスクの3つに分けられます。低リスクは比較的おとなしい性質のがんで、進行が遅いのが特徴です。
高リスクは悪性度が高い、またはPSA値が非常に高いなど、前立腺がんが既に進行してしまった状態。転移する可能性も高いため、早期的な治療が望ましいとされます。根治は十分期待できますが、再発のリスクが高いので、根治後は再発予防対策を取るようにしましょう。
リスク分類の基準は一般的に「D'Amico(ダミコ)分類」、または「NCCN分類」が用いられます。
前立腺がん患者に最適な治療法を提供するため、1998年にダミコ氏らによって考案されました。分類が簡単かつ再現性も確認されたことで、世界中に浸透。
日本泌尿器科学会の「前立腺癌診療ガイドライン(2012)」でも、D'Amico(ダミコ)のリスク分類の分類法が採用されています。
病期(T分類) | グリーソンスコア | PSA値 | |
---|---|---|---|
低リスク | T1~T2a | 6以下 | 10ng/mL未満 |
中リスク | T2b | 7 | 10ng/mL~20ng/mL |
高リスク | T2c | 8~10 | 20ng/mL超 |
病期(T分類) | |
---|---|
低リスク | T1~T2a |
中リスク | T2b |
高リスク | T2c |
グリーソンスコア | |
---|---|
低リスク | 6以下 |
中リスク | 7 |
高リスク | 8~10 |
PSA値 | |
---|---|
低リスク | 10ng/mL未満 |
中リスク | 10ng/mL~20ng/mL |
高リスク | 20ng/mL超 |
National Comprehensive Cancer Network(全米総合がんセンターネットワーク)のガイドラインに基づく分類法です。D'Amico(ダミコ)分類と異なる点は超高リスク分類が設けられていること。前立腺がんが被膜を超えて精嚢や周囲の組織・臓器に浸潤している場合、超高リスクに分類されます。
高リスク・超高リスクの前立腺がんは再発する可能性が高いため、「治療終了後も定期検診を忘れずに受ける」「再発を防ぐため、免疫力を向上させる」といった対策が大切です。
病期(T分類) | グリーソンスコア | PSA値 | |
---|---|---|---|
低リスク | T1~T2a | 6以下 | 10ng/mL未満 |
中リスク | T2b~T2c | 7 | 10ng/mL~20ng/mL |
高リスク | T2c | 8~10 | 20ng/mL超 |
超高リスク | T3b~T4 | - | - |
病期(T分類) | |
---|---|
低リスク | T1~T2a |
中リスク | T2b |
高リスク | T2c |
超高リスク | T3b~T4 |
グリーソンスコア | |
---|---|
低リスク | 6以下 |
中リスク | 7 |
高リスク | 8~10 |
超高リスク | - |
PSA値 | |
---|---|
低リスク | 10ng/mL未満 |
中リスク | 10ng/mL~20ng/mL |
高リスク | 20ng/mL超 |
超高リスク | - |
1829年にフランスのRecamierによって転移という言葉が初めて使用され、1973年にFidlerらが行なったマウスを用いた転移実験モデルが確立したことで、転移研究の基礎が築かれたとされています。
また1986年には、周囲に広がる浸潤過程が、がん細胞と上皮の下にある基底膜の接着、基底膜の分解、がん細胞の運動の3段階による「Three Step Theory」だと、アメリカのLiottaによって提唱されました。
これらのがん転移の概念や実験結果による確立がきっかけとなり、がん細胞の転移メカニズムを細胞、分子レベルで解明する研究が世界中で活発になっていきます。
そして、さまざまな研究が行なわれた結果、以下のようなことが明らかになってきたのです。
これに加えて、がんの転移は偶然に起こるのではなく、転移の過程をすべて連続で通過したがん細胞のみが形成できることが分かっています。
前立腺がんに関しては、男性ホルモンが発症に大きく関与していることから、男性ホルモンを枯渇させることで増殖できない性質を利用した治療法を、1940年頃にアメリカの外科医Hugginsらが発見。その功績が認められノーベル賞を受賞しました。
さらに、病理組織学的分類として1966年にアメリカのDonald F. Gleasonによって階層化の方法が初めて考案されました。それがグリーソンスコアです。顕微鏡でがん細胞の顔つき(構造異型)を確認して、がんの悪性度を判断。面積が最も大きい組織型と2番目に大きい組織型のグレードを加算して、悪性度の判定を行ないます。
グリーソンスコアが6以下の場合は悪性度が低いがんと判断されますが、7は中ほどの悪性度、8~10の場合は悪性度の高いがんと判断。グリーソンスコアによって、がん細胞の悪性度を的確に判断できるようになりました。
前立腺がんには、骨転移の頻度が高いという特徴があります。前立腺がんが成長すると、がん細胞が血流にのって他の臓器へと移動。移動した場所で増殖することを転移と呼びます。
転移は血流が活発な骨や臓器、リンパ節で生じやすく、がん細胞が骨に転移することを骨転移と言います。前立腺がんの場合、肋骨や脊椎、骨盤、大腿骨などに骨転移が起きやすいことが分かっています。
骨には、古い骨を壊す・吸収する働きを持つ「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」が存在。両細胞がバランスを取って作用しながら、骨は常に生まれ変わっています。
しかし、がん細胞はランクルと呼ばれる物質の生産を促進させ、破骨細胞の作用を活発化させてしまいます。これにより破骨細胞と骨芽細胞のバランスが乱れ、骨に異常が発生。破骨細胞が骨をどんどん破壊してしまうのです。また、骨にはがん細胞を大きくさせる栄養成分が豊富に含まれており、その成分を取り込んでさらに増殖していきます。これにより骨に転移しやすくなるのです。
骨に転移すると、身体にしびれや痛み、麻痺などの症状が現れるようになるほか、骨が弱くなるため骨折しやすくなります。骨への転移が確認された場合、内分泌療法や化学療法などが実施されます。
これまでの研究や治療法の考案により、前立腺がんの治療法は進歩を続けています。1980年代以降には、神経を温存した前立腺全摘除術が行なわれるようになり、2000年頃には腹腔鏡(内視鏡)手術が確立。
2010年頃には、標準的な手術方式として広まっていきました。そんな腹腔鏡(内視鏡)手術は、2012年に保険適応となり、現在ではロボット支援手術も普及しつつあります。
通常のがん治療の場合、治療法として手術や放射線治療、ホルモン療法などが挙げられます。しかし、骨などに転移が見つかった場合、他の箇所にもがん細胞がある可能性を考慮した上で、はじめはホルモン療法または化学療法で治療していくケースが多いのです。
そういった治療に加えて、がんの進行度や状態、骨転移の症状に合わせて、骨への治療や痛みを緩和させる治療も組み合わせて治療することができます。痛みを緩和させる治療では、骨転移に対する手術や転移箇所への放射線療法などを実施。骨への治療としては、新しいタイプの薬としてランマークという薬剤を使用します。
ランマークは破骨細胞を活発化させるランクルの働きを抑制。結果、がん細胞の骨転移が抑えられ、痛みを軽くする効果があると考えられています。ランマークは注射剤で、4週間に1回皮下に投与するだけのため、外来で治療を受けることが可能です。
現在でも前立腺がんに関する研究が進められており、生命の維持だけでなく患者のQOLを重視した治療法が受けられるようになりました。今後の研究成果や治療法の開発にも注目したいところです。
■参照元