転移後の治療方法
このページの監修医師
医療法人健身会
周東寛 理事長
前立腺がんの転移が起こっていることが分かった場合、どのような治療を行なうことになるのでしょうか…?
こちらのページでは、前立腺がん転移後の主な治療方法について、具体的に紹介していきたいと思います。
前立腺がん転移後の治療方法一覧
以下に、前立腺がんの転移が分かった後に行なわれる主な治療4つをピックアップしてみました(「ホルモン療法」「抗がん剤治療」「放射線療法」「緩和ケア」)。
それぞれの治療について特徴などを一挙にまとめているので、前立腺がん転移後の治療について知りたい方はぜひ参考にしてください。
ホルモン療法(内分泌療法)
前立腺がんは、副腎や精巣から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激によって進行する性質があるため、アンドロゲンの作用や分泌を抑える薬を投与するのも効果的。これが内分泌療法です。内分泌療法のみでの完治は難しいと考えられていますが、前立腺がんにとって有効的な治療であることは間違いありません。手術や放射線治療の選択が難しいケースや、放射線治療の前後でがん細胞が他臓器に転移したケースなどで検討されるのが一般的です。
ただ、内分泌治療には問題点と言われている点が1つあります。それは、治療をある程度の期間継続していると効果が弱まり、病状がぶり返してしまうという点。これを「再燃」といいます。再燃してしまった場合、副腎皮質ホルモンや女性ホルモン等が用いられることがありますが、これらの薬も同様に、続けて使用していると次第に効果が弱まっていくといいます。
ちなみに、内分泌療法の効果が弱まり、再燃と診断されたがんを「去勢抵抗性前立腺がん」と呼びます。この去勢抵抗性前立腺がんに対しては、アンドロゲン受容体を阻害する働きを持つ「エンザルタミド」や、アンドロゲン合成を阻害する働きを持つ「アビラテロン酢酸エステル」といった薬物による治療が有効とされています。副腎皮質ホルモン剤を用いた治療や、化学療法を組み合わせることもあります。
内分泌療法には、性機能障害をはじめとした副作用がみられることがありますが、通常、症状は一過性のもの。ただ、副作用が強く現れる場合は、薬剤を変えたり治療をストップすることもあります。
抗がん剤
前立腺がんの転移で最も多いと言われるのが骨転移(がん細胞が骨に転移する病態)。骨転移には、以下に挙げるような薬剤での治療が効果的です。
- ゾメタ(ゾレドロン酸)
- ランマーク(デノスマブ)
これらの薬剤は、骨を破壊する働きを持つ破骨細胞の作用を抑制し、骨病変の進行を遅らせることが可能。骨折リスクや痛みの軽減等も期待できます。いずれも、1ヶ月に1回程度のペースで皮下注射によって投与するのが一般的です。ただ、これらの薬剤投与が体内のカルシウム値を低下させることもあるそう。そのため、カルシウム製剤・ビタミンDを並行して摂る必要があるといいます。
また、骨転移を伴う去勢抵抗性前立腺がんには、放射線医薬品の「ゾーフィゴ」が効果を発揮。静脈注射で投与するもので、体内から放射線を出して骨転移の治療に働きかけます。ゾーフィゴは「ラジウム-223」と呼ばれる放射性物質であり、骨転移したがん細胞の増殖を抑制してくれるそう。4週間ほどの間隔をあけて最大6回まで投与が可能です。
最後にもう1つ、「デノスマブ」という薬剤が使われることも。骨病変治療薬であるデノスマブは、固形(非血液関連)がんから起こる骨転移患者にみられる骨折などの骨関連合併症を予防する薬剤として承認されており、骨に対して抗がん作用を持つ可能性がいくつかの研究で示されています。実際に、高い悪性度を持ちホルモン療法で効果が現れなくなった前立腺がんの男性が、デノスマブによる治療を行なった結果、骨転移の発症を7ケ月以上も遅らせることができたという報告があります。
放射線療法
高エネルギーのX線や電子線を照射することでがん細胞を傷害し、がんを小さくするのが放射線治療。「組織内照射療法」と「外照射療法」があります。
がん診断時のPSAが100以上など異常に高いケースや、MRI・CTで骨盤リンパ節転移がみられる前立腺がんのケースに対しては、遠隔転移や再発のリスクが高いと判断されるためホルモン療法が主体の治療を行ないます。そして、そのホルモン療法の経過が良い場合、追加治療として放射線治療が検討されることがあります。骨盤リンパ節に転移が起こっているケースでホルモン療法の経過が良い場合にも、骨盤照射を行なうことがあります。
また、前立腺の全摘除術後に、一度「0」を示したPSA値が上昇してしまうケース(局所再発の疑いがあるケース)では、前立腺がもともとあった場所である前立腺床に対して放射線治療が行なわれることがあります。
放射線治療期間の短縮について
前立腺がんに対して実施される現在の放射線治療では、だいたい2ヶ月程度の長期治療が必要となっており、患者の負担が大きいと言われています。そのため、1度の照射線量を増やして治療期間を短くする治療計画の有効性が示唆されているそう。ただ、1度の照射線量を増やすと、周りの正常組織における副作用が強まる懸念があるため、「IGRT」と「IMRT」を用いた治療期間の短縮が期待されています。
また、位置精度を高めることによって1度の照射線量をより増やし、治療期間をさらに短縮する「定位放射線治療」も注目されているのだとか。この治療は早期肺がんや脳転移などに活用されてきたものですが、最近は前立腺がんに対しても試みが行なわれています。
緩和ケア
前立腺がんのみならず、あらゆるがんの治療においてとても重要となってくるのが「緩和ケア」です。上で紹介してきたような直接的な治療とは目的も内容も異なりますが、緩和ケアは、がんと診断されたときから治療中、経過観察中にいたるまで、さまざまなタイミングにおいて、必要に応じて行なわれるべき重要なものといえます。
がんの診断時や治療中、転移が分かったときなどは、ひどく落ち込んでしまったり、不安で眠れなくなってしまうこともあるでしょう。また、治療期間中は、食欲がなくなってしまったり、強い痛みに耐えられないと感じることだってあるかもしれません。そのような“がんに伴う辛さ”を和らげるというのが、緩和ケアの基本的な考え方です。この考え方を取り入れることによって、辛い症状や気持ちを緩和しながら、日々の生活を送れるようになります。
緩和ケアは、がんに伴う身体と心の痛み・辛さを和らげるのはもちろん、患者やその家族がより自分らしく日々を過ごせるように支えることも目的としています。さらに、精神的な辛さや療養生活の中で発生する問題などに対して、社会制度の活用等を含めて幅広い支援を行なうことも大事な役割です。
「がんになってしまったのだから、痛みや辛さは仕方がないこと…」と諦める必要はまったくありません。まずはその辛い気持ち・状況を人に伝えることが、苦痛を和らげる第一歩になります。痛み、気持ちの辛さ、不安などがあるときは、まず医師や看護師、がん相談支援センターなどに相談をして、緩和ケアについて話を聞いてみましょう。
前立腺がんの転移治療に伴う副作用と合併症もチェック
前立腺がんの転移を診断された後で行なわれる治療について、ここまでくわしく解説してきました。では、治療に伴って現れる副作用というのはあるのでしょうか?また、前立腺がんに伴う合併症も気になるポイントです。以下でチェックしてみましょう。
前立腺がんの転移治療で起こる副作用とは…?
前立腺がんの転移治療に伴って現れる副作用は、治療の種類によって異なります。以下に、それぞれの治療による主な副作用を簡単にまとめてみました。各副作用の具体的な症状や対策などについては、詳細ページをご覧ください。
- ホルモン療法による副作用…むくみ、火照り、体重の増加など
- 放射線療法による副作用…「外照射」では、排尿障害のほか、直腸炎や放射線性膀胱炎による血尿・血便・痛みなど。「組織内照射」では、排尿困難など。
- 化学療法による副作用…アレルギー反応、骨髄抑制、吐き気・嘔吐、下痢、便秘、口内炎、貧血、出血傾向、疲労感・だるさ、脱毛、手足のしびれ感など。
前立腺がんに伴う合併症とは…?
前立腺がんに伴う合併症としては、主に尿失禁や性機能障害といった症状が挙げられます。それぞれの具体的な症状や対策については、詳細ページでくわしく解説しています。
参照元:CANCER CONNECT
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