生検と画像診断
このページの監修医師
医療法人健身会
周東寛 理事長
前立腺がんの転移の有無を確認する一連の流れとして、ここでは前立腺生検と画像診断について詳しく解説します。
前立腺がん診断における前立腺生検とは
前立腺生検とは、前立腺の組織の一部を外科的に採取し、がん細胞の有無を確認する検査。前立腺がんが疑われる患者に対し、確定診断(がんであるかどうかを確定させるための診断)として前立腺生検が行われます。
前立腺がんであるかどうかの検査は、通常、PSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる腫瘍マーカーでスタートします。このPSAの数値が高ければ高いほど前立腺がんの疑いも高まります。
PSAの値が4~10の場合、前立腺がんに罹患している確率は約20%。PSA値10~20の場合には約40%、PSA値20以上の場合には約50~70%の確率で前立腺がんが発見されると言われています。
前立腺生検の流れ
前立腺生検は、感染症を予防する目的で、通常は手術室で行われます。組織の一部を外科的に採取する検査なので、静脈麻酔や下半身麻酔、局所麻酔など、麻酔下にて実施。検査自体は10分程度で終わります。
抗菌剤の点滴
感染症の予防のため、検査の当日は抗菌薬を点滴します。
前立腺の状態を確認
組織を採取する前に、超音波で前立腺の状態を確認します。
前立腺の組織を採取
直腸内腔から直径約1.5mmの針を前立腺に向けて挿入し、前立腺組織を10ヶ所以上採取します。
安静
検査終了後、麻酔の影響が消えるまでベッドで安静にします。
なお、前立腺生検は発熱などの合併症を起こしやすい検査なので、合併症に備え、多くの医療機関では1泊2日の入院を必要とします。合併症が重症化すれば、退院は延期となります。
前立腺生検の合併症
前立腺生検にともない、合併症が生じることもあります。代表的なものは以下の4種類。こういったリスクについても、生検を受ける前に理解しておくことが大切です。
血尿
前立腺は膀胱の出口にある組織です。よって生検を経た後に、血尿を生じることがあります。通常は2~3日で症状が改善しますが、改善が見らない場合には点滴等の必要な処置が採られます。
血便・血精液症
生検による前立腺からの出血の影響で、血便や血精液症(精液に血液が混じる症状)が見られることがあります。特に治療の必要はありません。
発熱
前立腺生検は、直腸に針を刺す検査法です。その際、直腸に滞在している大腸菌等が体内に侵入し、感染症によって発熱する場合があります。予防のため、検査前には抗生物質の注射を行い、かつ検査後には抗生物質の服用を行います。退院後、30℃以上の発熱が生じた場合には、速やかに泌尿器科外来または救急外来を受診してください。
排尿障害
針を刺した影響で、前立腺がむくんでしまうことがあり、その影響でスムーズな排尿ができなくなることがあります。まったく排尿ができない「尿閉」という症状を起こした場合、尿道にカテーテルを挿入して人工的に尿を排出させることがあります。
前立腺生検を受ける際の注意点
生検前の注意点
抗血液凝固薬(血液の流れを良くする薬)を服用している方は、一時的に服用を中止する必要があります。脳梗塞や不整脈等の病気の影響で抗血液凝固薬を服用している方は、生検を受ける前に医師に申告してください。
※主な抗血液凝固薬(商品名)
バファリン81、バイアスピリン、ワーファリン、ペルサンチン、アンギナール、エパデール、ソルミラン、ロコルナール、エステリノール、パナルジン、オパルモン、プロレナートなど
生検後の注意点
生検後、しばらくの間は前立腺が炎症を起こしやすい状態となります。炎症を回避するために、生検後の約1週間はアルコール摂取を控えてください。また、自転車やバイクの利用も、約1週間は控えるようにしましょう(2時間以内の乗車ならば可)。水分を十分に摂るとともに、抗生物質を飲み忘れないようにしましょう。
前立腺がんが確定したら画像診断で転移の有無をチェック
生検を経て前立腺がんが確定した場合、他の組織への転移の有無を確認するため、状態に応じ下記3種類の画像診断のいずれか、または全てを受けることになります。
CT検査による画像診断
CT検査とは、体にX線を照射して体の断面図を映像化し、各種の病変の有無を確認する検査のこと。前立腺がんのCT検査では、主にリンパ節や肺への転移の有無を確認するために実施されます。
下記のMRI検査に比べ、短時間で広範囲の検査をできる反面、病変のある部分と正常な部分との違いが明確に映像化されないという弱点もあります。
なお、前立腺がんのCT検査を受ける際には造影剤が投与されるため、過去に造影剤によるアレルギー症状が生じたことのある患者は、事前に医師に申し出ておく必要があります。
MR検査Iによる画像診断
MRI検査とは、磁力の働きを利用して体の断面図を映像化し、各種の病変を確認する検査のこと。前立腺がんのMRI検査では、主に、前立腺皮膜より外へのがん細胞の進展状況、および、精嚢腺への転移の有無を確認するために実施されます。
上記のCT検査に比べ、病変部分と正常な部分の違いが明確に映像化されるというメリットがある反面、検査に時間がかかる、小さな病変を見つけにくい、体内に金属(ペースメーカーなど)のある患者には実施できないなどのデメリットがあります。
前立腺がんのMRI検査を受ける場合、CT検査と同様に造影剤の投与が不可欠となります。造影剤アレルギーをお持ちの方は、検査前に医師に申し出るようにしましょう。
また、リフトアップ美容整形のうち、顔に糸状の金属を入れる手術を受けたことがある方については、MRI検査を実施しない医療機関もあります(医療機関により対応は異なります)。MRIに金属が反応し、ヤケドの恐れがあるからです。
骨シンチグラフィ検査による画像診断
骨シンチグラフィ検査とは、専用の装置を使って骨を映像化し、骨の異常を確認する検査のこと。骨に転移しやすい前立腺がんの検査においては、頻繁に行われている検査です。骨にがんが転移していた場合、病変部分が黒く映像化されます。
なお、CTやMRIはイメージをしやすい検査と思われますが、骨シンチグラフィも同様の方法の検査と考えて差し支えありません。薬剤を注射後、専用の撮影台の上に横たわることで実施されます。
情報の参考にさせていただいた医療機関
京都大学医学部附属病院

https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/
院長 | 稲垣 暢也 |
---|---|
住所 | 京都府京都市左京区聖護院川原町54 |
TEL | 075-751-3111 |
診療受付時間 | 8:15~11:00 |
休診日 | 土曜・日曜・祝日 |
泌尿器科長・教授 小川修医師
1982年、京都大学医学部を卒業。のち田附興風会北野病院にて泌尿器科臨床研修の後、母校の大学院に戻り医学博士号を取得。ニュージーランド留学、京都大学助手、秋田大学助教授等を経て、1998年より京都大学泌尿器科学教授に就任。現在にいたります。「ニュージーランド癌協会賞」の受賞歴あり。
わきたクリニック

http://wakita-clinic.jp/
院長 | 脇田 利明 |
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住所 | 愛知県名古屋市中区金山1-14-9 長谷川ビル4F |
TEL | 052-322-1022 |
診療時間 | 平日9:00-13:00 / 16:00-18:30 |
休診日 | 木曜、土曜午後、日曜、祝日 |
院長 脇田利明医師
1991年、三重大学医学部を卒業後、三重県立総合医療センター泌尿器科、三重大学医学部泌尿器科助手、愛知県がんセンター中央病院泌尿器科医長などを経て、2011年、わきたクリニックを開院。前立腺がんの治療を得意とし、これまで携わった摘出症例は300例以上にものぼります。日本泌尿器科学会専門医・指導医。
東戸塚記念病院

https://www.higashi-totsuka.com/
院長 | 山崎 謙 |
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住所 | 神奈川県横浜市戸塚区品濃町548-7 |
TEL | 045-825-2111 |
診療時間 | 平日 8:45~ / 14:00~ 土曜 8:45~ |
休診日 | 要確認 |
各務裕医師
大学卒業後、東京慈恵会医科大学附属青戸病院泌尿器科等で研鑽を積んだのち、東戸塚記念病院泌尿器科に転じて、現在同科の常勤メインドクターとして活躍。前立腺がんを始め、膀胱がん、腎がんの入院化学療法を積極的に実施。前立腺がんにおいては、外来による化学療法も推進しています。
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RBS米ぬか多糖体の
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