PSAと前立腺がん転移の関係
このページの監修医師
医療法人健身会
周東寛 理事長
前立腺がんの監視療法時にチェックする数値であるPSA値。
このページでは、PSA値とは何か?といった基礎知識から、PSA検査の概要、PSA値が上がった後にすべきことなどを紹介していきます。
PSAとは?
PSAとは「前立腺特異抗原」の略で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク。多くは精液中に分泌されますが、ごく少量が血液の中に取り込まれます。
健康な人の血液中にもわずかに取り込まれるのですが、前立腺に異常がある場合、その濃度が高くなります。この状態が、「PSA値が高い」と言われる状態です。
前立腺がんが発症している場合も鋭敏にPSA 値が上がるため、前立腺がんをチェックする有効な指標として用いられています。
基本的にはPSA値が高くなるにつれて前立腺がんの確率も上がっていきますが、年齢によって設けられた基準値が参考にされることも多いです。
PSA検査の概要
採血によって血液中のPSA量を測定するPSA検査。
このPSA検査は、スクリーニング検査のひとつです。スクリーニング検査というのは、前立腺がんを発症している可能性がある人を見つけるために行なう検査のことです。
PSA検査を受けるメリットとして挙げられるのは、前立腺がんで死亡するリスク、転移がんで発見されるリスクが下がること。また、早期発見につながることで治療の選択肢が増えるのも大きなメリットのひとつでしょう。
このようにたくさんの利点がある検査ですが、PSA値は前立腺がん以外の異常によっても上昇する値。そのため、PSA値が高かったからといって必ずがん細胞が発見されるというわけではありません。また逆に、PSA値は正常だったけれどもがんが見つかったというケースもあります。1度の検査で判断できない場合は、期間をおいて数度測定し、数値の変動をチェックするケースもあります。
PSA検査はどのくらいの頻度で受ければよい?
PSA検査は、定期的な実施が推奨されている検査です。
前立腺がんは自覚症状の少なさから発見が遅れがちながんであり、症状を自覚してから病院を受診して発見された場合、その約4割は既に他臓器へ転移しているケースだといいます。一方で、PSA検査等の検診で発見された場合は、約6割が早期のがんだったという報告があります。
なお、PSA検査で異常が見つからなかったとしても、小さな前立腺がんが潜んでいる可能性や、将来前立腺がんを発症する可能性がないとはいえません。早期発見のためには、PSA検査を受けて問題がなかった場合でも、その値に応じて定期的な検査を受けることをおすすめします。
ちなみに、一般的に勧められるPSA検査の頻度は、PSA値:0.0~1.0ng/mLの場合で3年ごと、PSA値:1.1ng/mL~基準値上限の場合で毎年となります。
PSA検査にかかる費用は?
前立腺がんが疑われてPSA検査を受ける場合には、保険診療の範囲となります。一方で、自覚症状などがとくになく、検診の一部としてPSA検査を受ける場合には、保険が適用されず自費診療となります。
さて、具体的な費用ですが、人間ドックなどのオプションとして設けられているPSA検査に関しては、おおよそ2,000~3,000円程度が多いです。
自治体の前立腺がん検診の場合は、自治体によっては無料で受けられることもありますが、500~2,000円程度の自己負担がかかるところもあります。
ちなみに、検査結果が分かるまでの期間は施設によって異なり、検査当日に分かるところもあれば、1週間ほどの期間がかかるところもあります。
PSA値の基準値をチェック
基本的に、PSAの基準値は年齢に関係なく「1mL中に4.0ng以下」の範囲であれば問題ないと判断されますが、施設によっては、以下のような年齢階層別のPSA基準値を用いる場合もあります。チェックしてみましょう。
【年齢階層別PSA基準値】
- 50歳~64歳…0.0~3.0ng/mL
- 65歳~69歳…0.0~3.5ng/mL
- 70歳以上…0.0~4.0ng/mL
PSA値が上がる要因は?
PSA の値は前立腺がんによっても上がりますが、それ以外の原因によっても上がることがあります。以下に、PSA値が高い場合に考えられる疾患をまとめてみました。
- 前立腺がん
- 前立腺肥大症
- 前立腺炎
このほか、前立腺への機械的な刺激によっても軽度の上昇がみられることがあります。
PSAが高いと言われたらどうすればよい?
では、PSA値が高いことが分かったらどうすればよいのでしょうか?
まずは泌尿器科に行き、精密検査が必要かどうかを診てもらいましょう。
一般的な診察の内容としては、再度PSA値を測定し、変動があるかどうかを確認します。また、前立腺が腫大していないか・硬い部分がないかを直腸診でチェックすることも。さらに、超音波検査で前立腺のサイズや形態を診たり、検尿で前立腺の炎症を調べることもあります。
こうして医師の診察・検査を受け、がんが疑われるようであれば、前立腺生検(精密検査)が勧められます。
決して放置はせずに、必ず泌尿器科を受診するようにしましょう。
PSAバウンス現象とは
PSAバウンス現象とは、前立腺がんの放射線治療を行った後に、一時的にPSA値が上昇することです。放射線治療をしてから3年以内に起こりやすいことが研究論文からわかっています。また、研究では日本人と欧米人でPSA値の上昇度合いに差があることから、人種的な差が存在する可能性が示唆されました。
PSAバウンス現象は一過性なので、PSAの値が上昇しても、治療が必要となる生化学的再発とはみなされず、経過観察で対応することがほとんどです。期間や上昇レベルが詳しくわかっていないため、PSAバウンス現象の具体的な定義は決まっていません。 しかし、PSAバウンスかどうかを判断する定義として「アストラの定義」「フェニックスの定義」の2つが考えられています。アストラの定義ではPSA値が3回以上連続して上昇すると再発、2回連続の上昇まではPSAバウンス現象となります。一方、フェニックスの定義ではこれまでの安定的なPSA値から2.0以上上がると再発、2.0未満の上昇ではPSAバウンス現象だと考えられています。
2.0以上のPSA値上昇はフェニックスの定義で考えると再発の範囲ですが、現状PSA値は測定誤差があります。このことを考慮すると、再発ではなくPSAバウンス現象の可能性が高いといえるでしょう。 ただし、検査後にPSA値がさらに上がることもあり得ます。再発かどうか見極めるためにも、PSA値の検査は定期的に受けてください。
関連因子、予後について
現在、PSAバウンス現象の関連因子や予後について、いくつかの報告が挙がっています。
PSAバウンスの関連因子
PSAバウンス現象は臨床試験でのパラメーターとは関わりがないとされています。しかし、単数・複数のデータを統計的に分析した単・多変量解析では、年齢の違いがPSAバウンス現象に関わっていることがわかりました。特に前立腺がんを発症しやすい60代以降でも、62.5~65歳までの方が多いとの結果が明らかになっています。
海外でも同様の研究結果が出ており、年齢が人種を問わずPSAバウンス現象に関係していることが示されました。また、生体内の物質を調べるMRSの結果から、PSAバウンス現象は炎症性の変化が原因だとする報告も挙がっています。
PSAバウンスと予後
放射線治療後にPSAバウンス現象が起こった方は、起こっていない方に比べてがんの再発率が低いことがわかっています。PSA値の上昇速度もPSAバウンス群では短く、観察されるまでに時間がかかりません。また、PSAバウンスが起こった後の生存率の高さや経過の良さが明らかになっていることから、PSAバウンス現象は良い予後を予測する因子だといえます。
参照元:前立腺がん 知っておきたい予備知識 PSA検査|アステラス製薬|なるほど病気ガイド
参照元:治療後のPSAの変動|Japanese Journal of Endourology(2013)26:171-175(PDF)
免疫力アップさせる成分
RBS米ぬか多糖体の
期待できる効果・効能