肝転移

このページの監修医師

医療法人健身会

周東寛 理事長

ここでは、前立腺がんが肝臓に転移する「肝転移(かんてんい)」について詳しく解説しています。肝転移の原因や、可能性の高いがんについてもまとめました。前立腺がんの肝転移について詳しく知りたいという方はぜひ参考にしてください。

肝転移とは?

肝臓以外にできた臓器のがん細胞。それが血液の流れに乗って肝臓にたどり着き、がん細胞が増殖してしまうことを肝転移といいます。肝臓へはほぼすべてのがんが転移する可能性がありますが、最も多いのが大腸がんや胃がんなどの消化器系がんです。次いで乳がんや肺がんなどが転移しやすいとされています。

肝臓に転移したがんのことを「転移性肝がん」とよび、通常の肝細胞がんと同じ扱いにはなりません。転移する前に最初に発生した原発のがん治療に準じて治療を行なう必要があるからです。

また、同じ肝臓の中を通るがんに「肝内胆管がん」がありますが、治療法が異なることからこちらも肝臓がんとは区別されています。

デューク大学医療センターの研究データによると、前立腺がんの転移部位は生存期間に影響するとされており、肝転移の場合は最も短く、生存期間は14カ月といわれています。[注1]これは、前立腺がんが肝転移するのは末期であることが多いためです。

肝転移に対する治療は、がんが転移した肝臓を部分的に切除するのが最も効果的で長期生存を見込める方法です。

しかし、前立腺から肝臓のような離れた臓器への転移の場合、根治は不可能と考えて切除は行なわないのが一般的。がん細胞がこれ以上増殖しないように抑え、QOL(生活の質)を維持することを目的に、ホルモン療法や放射線療法を行ないながら、がんと共存を図ることになります。専門医と相談して本人の希望に合わせた治療を選択していくことになるでしょう。

【肝転移の可能性が高い主ながん】

     
  • 大腸がん
  •  
  • 胃がん
  •  
  • 乳がん
  •  
  • 肺がん

[注1]デューク大学医療センター「前立腺がんの転移部位が生存期間に影響」

肝転移の原因(メカニズム)

血管やリンパ管に浸潤したがん細胞が、血液やリンパ液の流れによって広がることで起こります。そのがん細胞が肝臓に流れ、新たながん細胞のかたまりが肝臓内で形成されると肝転移となります。

肝臓は食事から吸収した栄養素を取り込んで体内に必要な成分に変える働きや、体内でつくられた有害物質や摂取した有害物質を解毒して排出する役割を担っています。そのため全身の血液が一度肝臓を通るため、その流れに乗ってがん細胞が運ばれてしまうのです。

肝臓は沈黙の臓器とよばれ、初期のがんにはほとんど自覚症状がありません。がんを治療中の方は精密検査を行なうため、血液検査や超音波検査、CTやエコー検査で見つかりやすいほか、検診などで偶然見つかることもあります。

肝転移によって引き起こされる症状とは…?

転移性肝がんは初期には症状がほとんど出てきません。これは、転移性肝がんは原発性の肝がんと違い、もともと肝臓の機能が正常なことが多いため。がんが進行して正常な幹細胞が大きく減るまで肝機能が保たれることが多く、転移初期には症状で気づくということがないのです。前立腺がんと診断された際に精密検査で見つかることがほとんどでしょう。

ここでは、肝転移や転移がんの進行によって引き起こされる可能性のある主な症状をまとめています。

倦怠感

がんが進行して肝臓の機能が低下すると、肝臓障害の症状として全身がだるいような感覚が起こります。ただ、全身の倦怠感だけで肝臓がんを疑うことはほとんどないため、もし症状があらわれていたとしても、それだけでがんの転移に気づくことはまれでしょう。

黄疸

肝転移によりがんが進行し、肝臓の機能が低下したり胆汁の排泄経路に異常が起きたりすると、全身の皮膚が黄色っぽく見える、白目の部分が黄色く色づいて見えるなど黄疸の症状があらわれます。

軽度の場合、肉眼で色の違いはほとんどわかりませんが、倦怠感や皮膚のかゆみといった症状を伴うようです。

腹部の張り・圧迫感

肝臓がんが進行すると、腹部が張ったような圧迫感といった症状が起こります。これは肝臓内のがんが大きくなることにより感じるもので、5cm以下の大きさのときには症状として自覚がないようです。がんの大きさが直径5~10cmの大きさになると違和感があらわれます。

内臓痛・内臓出血

肝臓は痛みを感じることのない臓器ですが、がんが大きくなると肝臓を覆っている被膜が伸ばされ、内臓全体が痛いような感覚が起こることがあるようです。また、がんそのものは小さくても肝臓の外へ突出し、破裂して腹腔に出血を起こすことがあります。そうなると腹部に激痛が起こり血圧も低下。容体が急変して命を脅かす深刻な状態に陥ります。

肝転移が起こりやすい部位とは?

肝転移は肝臓に近い部位の消化器、大腸や胃からの転移が多いとされています。次いで全身の血液が通る肺がんが多いそうです。

とくに大腸がんを患っている方のうちの約10%が大腸がんと診断された時点ですでに肝転移している傾向にあり、また大腸がんの手術を行なったあとに肝転移を発症する確率が高いといわれています。

大腸がんや神経内分泌腫瘍から肝転移した場合、外科的切除によって改善を見込めることがありますが、膵臓がんや胆道がん、肺がんは進行が早いため、肝転移が見つかったとしても切除手術を行なうことはほとんどありません。また、大腸がんからの肝転移の場合でも、がん細胞転移の数や状況に応じて切除が難しいことがあります。

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医療法人健身会周東寛 理事長 医師監修

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周東寛理事長

  • 医療法人健身会 理事長
  • 昭和大学藤が丘病院呼吸器内科兼任講師
  • 獨協医科大学越谷病院 糖尿病内分泌・血液内科非常勤講師

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