ホルモン療法(内分泌療法)

このページの監修医師

医療法人健身会

周東寛 理事長

ここでは、前立腺がんの転移に対するホルモン療法(内分泌療法)について詳しく解説します。

ホルモン療法(内分泌療法)とは

前立腺がんには、男性ホルモンのアンドロゲンによる刺激によって進行する性質があります。そのため、アンドロゲンの分泌を抑えることで、前立腺がんの進行を抑えることも可能。この発想の基づき、アンドロゲンをコントロールして前立腺がんの進行を防ぐ治療法のことを、ホルモン療法(内分泌療法)と言います。

ホルモン療法に用いられる薬剤は、その作用機序に応じ、大きく分けて「脳下垂体に働きかける薬剤」と「アンドロゲンに働きかける薬剤」の2種類があります。

脳下垂体に働きかける薬剤

アンドロゲンの分泌をコントロールしているのは、脳にある下垂体という部位。この下垂体に働きかける薬剤を注射で投与することにより、アンドロゲンの分泌量を抑えることができます。具体的な薬剤としては、リュープリン、ゾラデックス、ゴナックスなどが挙げられます。

アンドロゲンに働きかける薬剤

アンドロゲンによる前立腺への働きかけを抑えるため、内服薬を用いたホルモン療法も採用されます。 具体的な薬剤としては、カソデックス(ビカルタミド)、オダイン、プロスタールなど。

注射薬は1ヶ月、または3ヶ月に1度。内服薬は毎日服用します。前立腺がんにおけるホルモン療法では、一般に注射薬、内服薬の両方が併用されることになります(MAB療法)。

ホルモン療法(内分泌療法)のデメリットと対策

前立腺がんにおけるホルモン療法(内分泌療法)は、多くの患者の場合、前立腺がんはもとより、転移に対しても著しい症状改善効果を得ることができます。非常にメリットの大きい治療法と考えて間違いないのですが、一方で避けられないデメリットがあることも事実。ホルモン療法(内分泌療法)のデメリットについて、以下、順天堂大学医学部附属順天堂医院公式HPから引用して解説します。

骨密度が低下する

ホルモン療法(内分泌療法)を受けることにより骨密度が低下し、骨粗鬆症を生じることがあります。

ホルモン療法は非常に有効な治療法ですが、アンドロゲンが押さえられることで、骨密度が低下します。骨密度が低下すると骨折や腰痛等の症状が起き、生活の質が低下します。

引用元:順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科「前立腺がんの薬物療法」

順天堂大学医学部附属病院では、ホルモン療法(内分泌療法)による骨粗鬆症の予防のため、早期から骨密度評価を実施。必要に応じ、患者には予防薬の点滴や歯科診療などを行っています。

薬剤の効果が持続できない

ホルモン療法の最大の弱点とされるのが、治療を続けることで徐々に薬剤の効きめが薄れてくるということ。薬剤の効果の持続期間には個人差がありますが、大なり小なり、ほとんどの症例の場合で見られる現象です。

ホルモン療法の効果の持続期間には個人差がありますが、前立腺がんの悪性度を示すグリソンスコアの点数が高い人、腫瘍マーカーPSAが最初から高い人、転移をすでに認める人は比較的早期に効かなくなる傾向があるようです。中には治療を継続することで、長い人は10年以上も病気が進行することがない人もいます。

引用元:順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科「前立腺がんの薬物療法」

同院では、ホルモン療法の効きめが薄れた患者に対し、「アンドロゲン除去治療」と「アンドロゲン交替療法」を行っています。

アンドロゲン除去治療

内服薬をいったん中止します。中止することで、PSA値が下がる場合があります。

アンドロゲン交替療法

アンドロゲン除去治療でPSA値が下がったとしても、その状態が継続するわけではなく、やがて値は上昇します。この際、別の種類の抗アンドロゲン剤を用いるか、または、より効果が強力な新薬を使用します。

去勢抵抗性前立腺がんへの対応

ホルモン療法(内分泌療法)を続けることにより薬剤の効果が薄れ、やがて前立腺がんが悪化してした状態のことを、去勢抵抗性前立腺がんと言います。去勢抵抗性前立腺がんにいたった場合、約80%もの頻度で骨に転移が起こるとされています。

患者が去勢抵抗性前立腺がんの状態に陥った場合には、上記のとおり、従来からある別の抗アンドロゲン剤に変更されることもありますが、昨今では、より効果が強力な新薬「イクスタンジ(エンザルタミド)」や「ザイティガ(アビラテロン)」が投与される例が増えてきました。

このホルモン抵抗性の病態を「去勢抵抗性前立腺がん」と言います。この状態になると、通常はさらにアンドロゲンを強力に抑える新規薬剤イクスタンジ(エンザルタミド)やザイティガ(アビラテロン)を使用します。この薬剤は非常に効果的な薬剤であり、海外の報告でも去勢抵抗性前立腺がんの全生存率の延長に寄与しています。

引用元:順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科「前立腺がんの薬物療法」

ただし、イクスタンジ(エンザルタミド)であってもザイティガ(アビラテロン)であっても、一般的な抗アンドロゲン剤と同様に、使用を続けることによって徐々にPSA値が上昇してくることがあります。もとより去勢抵抗性前立腺がんの患者の約3割において、これら薬剤の効果が得られないことも分かっています。

こうした事態を打開するべく登場した薬剤が、抗がん剤の「ドセタキセル」です。

がんがホルモン治療に抵抗性になり、アンドロゲン除去療法や交替療法を行っても、PSA値が上がってきたらどうするか。この悩ましい点を打開したのが抗がん剤のドセタキセルです。投与方法はドセタキセルを3-4週毎に点滴注射します。また白血球が下がることが多いので、一般的には投与してから約1週間後に外来で白血球を増やす薬を投与します。

引用元:順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科「前立腺がんの薬物療法」

抗がん剤と聞くと「副作用が強い」というイメージがありますが、他の多くの抗がん剤に比べ、ドセタキセルの副作用は軽め。外来のみで治療を続けることができます。

なお、ドセタキセルでも抵抗性となった前立腺がんに対しては、2014年に販売開始となった「カバジタキセル(ジェブタナ)」が用いられることが一般的。ただしカバジタキセル(ジェブタナ)はドセタキセルよりも顕著に白血の球減少が見られるため、初回投与時は入院したり、あるいは外来投与時でも白血球を増やす薬を併用したりといった、慎重な使い方がなされます。

【参考】去勢抵抗性前立腺がんの1ヶ月分の薬剤費

  • イクスタンジ(エンザルタミド)…約380,000円
  • ザイティガ(アビラテロン)…約440,000円
  • カバジタキセル(ジェブタナ)…約590,000円

それぞれの薬剤は保険適用となるため、患者の実質的負担は1~3割。高額医療費の対象にもなりますので、条件が該当した場合には申請手続きを忘れないようにしましょう。

意見を参考にさせていただいた医療機関

当記事は、岩手医科大学附属病院(岩手県)、新百合ヶ丘総合病院(神奈川県)、順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都)が発信している情報などを参考にして作成しました。

岩手医科大学附属病院

岩手医科大学附属病院
http://www.iwate-med.ac.jp/hospital/
院長 小笠原 邦昭
所在地 岩手県盛岡市内丸19-1
TEL 019-651-5111
診療時間 平日 8:30-17:00、土曜 8:30-12:30
休診日 日曜、祝日、第2・第3・第5土曜、年末年始(12月30日〜1月3日)

腫瘍センター長・臨床教授 伊藤薫樹医師

「患者中心のがん医療」と「やさしいがん医療」を目指し、外来化学療法室、緩和ケアチーム室、入院化学療法専門病室などの6つの部門を統括するドクター。患者はもとより、患者の家族にも寄り添う場として「がん患者家族サロン」を設けるなど、地域に密着した温かい医療の提供を心がけています。

岩手県内の基幹病院が参加する緩和ケアテレカンファレンスを定期的に開催するなど、がん患者への対応に関する啓蒙活動も積極的に実施。

新百合ヶ丘総合病院

新百合ヶ丘総合病院
http://www.shinyuri-hospital.com/index.php
院長 笹沼 仁一
所在地 神奈川県川崎市麻生区古沢都古255
TEL 044-322-9991
診療時間 月・木 9:00-12:00 / 14:00-17:00
火・水・金・土 8:30-12:00 / 14:00-17:00
休診日 日曜、祝日、年末年始

泌尿器科部長 伊関亮医師

東京医科大学医学部卒業。現在は新百合ヶ丘総合病院の泌尿器科部長を務め、ロボット手術のエキスパートとして数々の治療実績を積み重ねているドクターです。

日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医の他にも、日本泌尿器科学会ロボット支援手術プロクター認定医、ダヴィンチ手術認定見学施設認定医、日本ロボット外科学会 Robo Doc 国内A認定医など、ロボット手術に関連する専門医資格を多数保有しています。

順天堂大学医学部附属順天堂医院

順天堂大学医学部附属順天堂医院
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/
院長 天野 篤
所在地 東京都文京区本郷3-1-3
TEL 03-3813-3111
診療時間 平日 8:00-11:00 / 11:30-15:00(初診)
土曜8:00-11:00 / 11:30-14:30(初診)
※診療科により、診療・受付時間が異なる場合があります。
休診日 日曜、第2土曜、祝日、創立記念日(5月15日)、
年末年始(12月29日~1月3日)

教授 堀江重郎医師

1985年、東京大学医学部卒業。泌尿器科全般の診療に携わる一方で、ロボット支援手術(前立腺)、腹腔鏡手術(腎臓、副腎、前立腺)、腎臓・膀胱の進行がんの根治手術、前立腺がん手術、がんの化学療法など、患者の症例に応じて多彩な治療を実施するドクター。泌尿器科に関連させて、外傷跡の尿路再建手術、さらにはED、男性更年期障害などの男性医学にも幅広く対応しています。

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医療法人健身会周東寛 理事長 医師監修

医療法人健身会
周東寛理事長

  • 医療法人健身会 理事長
  • 昭和大学藤が丘病院呼吸器内科兼任講師
  • 獨協医科大学越谷病院 糖尿病内分泌・血液内科非常勤講師

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